一志会 2010年10月に発足した限定メンバーによる
新しい形のコミュニティ
「一志会」第66回の例会が開催されました。
2021.12.03 更新
一志会は、「公の精神」のもとに積極的に社会的責任を果たそうとの想いを共有する大企業経営幹部の「コミュニティー」です。11月30日に、コロナウイルス対策に万全を期して、第66回例会を開催しました。
ゲストとして、由紀ホールディングス株式会社 代表取締役社長 大坪正人氏をゲストにお迎えして、「ものづくりの力で世界を幸せに」と題したご講話をいただきました。
大坪氏は1975年神奈川県茅ヶ崎市生まれ。東京大学大学院工学系研究科を修了し、3次元プリンタのサービスを展開していた株式会社インクス(現ソライズ株式会社)に入社。2006年に実家の株式会社由紀精密に入社し、電気電子業界から航空宇宙医療関連等へとビジネスの方向を転換し、高付加価値の会社へと変貌させました。2017年、由紀ホールディングスを設立し、グループ化により、日本の中小製造業の高度な要素技術を先端産業に応用し技術の継続的な発展、それによる社会課題の解決を目指して活動中です。一柳とは、日頃から、ものづくり、企業経営、リーダーの在り方などについて議論を交わす友人です。
大坪氏は、大手金型メーカーの部門責任者から実家の由紀精密の経営に転じ、経営危機に瀕していた同社を10年間で売上4倍、航空・宇宙・医療分野で全売上の7割という事業改革を成し遂げましたが、その実践に当たっては、“世界最高品質の製品を作りたい、そのためには下請から脱し自社技術・製品で打って出ないといけない”との志で航空・宇宙・医療等の最先端分野、ハイエンドレコードプレーヤーの設計~製作、超精密加工時計部品などに取り組んできたこと、試行錯誤や失敗から多くの学びを得たこと、連携するパートナー選びが大切なことなどについて教訓を交え丁寧に説明されました。
その由紀精密での実践を他のものづくり企業に展開するため、由紀ホールディングスを立上げ、11社からなるグループにより、日本の中小製造業が長年培ってきた高度要素技術の未踏領域への応用や新産業創出など未来を見据えた事業活動の取組みについて、静かな語り口ながら熱く語られ、果敢にチャレンジされていることが伝わってきました。
また、中小製造業・町工場での人材確保に苦労した経験から、製造業をあこがれの職業にする取組み(INDUSTRIAL JP:2017年度グッドデザイン賞等受賞)やファクトリー・サイエンティスト(ものづくりの現場におけるDX人材)の育成についてご披露がありました。
日本の中小製造業の持つ優れた要素技術の消滅を防ぎたいという大坪氏の熱い思いと実践に裏打ちされた忌憚のない話に引き込まれ、会員からは、「日本のモノづくりの根幹を支える中小企業の未来を明るいものにする取組みに感銘した」、「新しい企業連携のスタイルは興味深い、今後の事業展開の参考にしたい」「同じモノづくりに取り組む者として勇気をいただいた、何故自分の会社でそこまでできないのだろう、できるようになるために何が必要かを考え抜きたい」などの声をいただきました。
その後、山田・サンフロンティア不動産専務取締役、柳生・プチファーマシスト代表取締役、満倉・全日本空輸代表取締役専務執行役員、籔・蝶理取締役専務執行役員、野村・興和取締役常務執行役員、品川・レシップホールディングス取締役執行役員管理本部長、佐渡・KPMGコンサルティング執行役員パートナー、吉田・ミスミグループ本社常務執行役員ID企業体社長、馬場・大日本住友製薬常務執行役員、吉岡・アスクル代表取締役社長CEO、神野・サーラコーポレーション代表取締役社長兼グループ代表・CEOから近況報告をいただきました。
今回も、交流時間では、ゲストを囲みより突っ込んだ意見交換や、会員間の懇談の輪がいくつもできました。にぎやかに談笑が続く中で予定の時刻を迎え、次回例会での再会を約して、閉会となりました。
【大坪正人氏の略歴】
大坪氏は、1975年神奈川県茅ヶ崎市生まれ。東京大学大学院工学系研究科を修了(専攻は産業機械工学)し、3次元プリンタで当時国内最大のサービスを展開していた株式会社インクス(現ソライズ株式会社)に入社。高速金型部門に所属し、ハードウェア部門の責任者として世界最高速で金型を作る工場を立ち上げ、世界の携帯電話試作金型の3割のシェアを取るまでに成長し、第一回ものづくり日本大賞、経済産業大臣賞を受賞されました。
2006年、実家の株式会社由紀精密に入社。電気電子業界から航空宇宙医療関連等へとビジネスの方向を転換し、独自に開発部門を立ち上げ、同社は高付加価値の会社へと変貌しました。2017年3月に皇太子殿下がご視察されるなど、中小製造業の中でも多くの注目を集める企業の一つとなりました。
2017年10月由紀ホールディングスを設立し社長に就任。グループ化により、日本の中小製造業で長年培われた高度な要素技術の消滅を防ぐとともに先端産業への応用による技術の継続的な発展、それによる社会課題の解決を目指して活動しています。
著書は、『すぐに使える精密切削加工 – 現場の即戦力』(2011年 技術評論社)、『ジャパン・メイドトゥールビヨン – 超高級機械式腕時計に挑んだ日本のモノづくり B&Tブックス』(2015年 日刊工業新聞社、共著)など、多数あります。