一志会 2010年10月に発足した限定メンバーによる
新しい形のコミュニティ
「一志会」第63回の例会が開催されました。
2021.06.15 更新
一志会は、「公の精神」のもとに積極的に社会的責任を果たそうとの想いを共有する大企業経営幹部の「コミュニティー」ですが、6月10日に、コロナウイルス対策に万全を期して、第63回例会を開催しました。
ゲストとして、一橋大学商学部教授の神岡太郎氏をお迎えして、「デジタル・トランスフォーメーションと企業の課題」と題する時宜に即したご講話をいただきました。
神岡先生は、北海道大学大学院博士課程(行動科学専攻)単位取得退学。工学博士。1990年一橋大学商学部専任講師、1995年商学研究科助教授に昇格、1996~1997年Univ.Illinois Urbana Champaign (Educational Technology/Computer Science)客員研究員を経て、2002年に商学研究科に開講されたEコマース講座を担当。 2004年一橋大学商学研究科教授。2007~2010年には副学長補佐。 一般社団法人CDO Club Japan顧問。2010年から政府情報システム改革検討委員会委員(総務省)等を務めています。
マーケティングや情報システムが企業全体としてどう機能するか、企業の競争力にどのように結びつくのか、マーケティングとITとの関係を研究対象としていますが、常に、企業の現場を重視し、内外の多くの企業ともフィールド研究をしており、特にCDO/CMO/CIO/CTOといった横串しリーダーシップの機能に関心を持たれ、いち早く提言をされています。
一柳とは、日ごろから企業経営、リーダーの在り方について議論を交わす友人です。
著書は、「マーケティング立国 ニッポンへ」(2013年日経BPマーケティング)や、「デジタル変革とそのリーダー CDO」(2019年同文館出版)など、多数あります。
神岡先生は、まず「デジタル・トランスフォーメーション(DX)の背景と課題」として、社会のデジタル化が進展する中で、企業の存在は≪利用者起点の価値創造≫ができるかどうか、に移っており、これはどのような産業でも起こりうるものである。従来型の発想のままでいると、顧客が求める価値から乖離してしまうことになる。それを防ぎ、企業を成長させるためには、デジタル・テクノロジーの進歩を使い切るほどの取り組みが求められるが、トップ以下、各階層にわたる全社的な覚悟と意識変革が必要となることを強調されました。
続いて、「DXとは何か」について、多くの具体的な事例を示されながら、デジタルを活用することで≪利用者にとって便利になる≫ことであり、そのためには、利用者との相互作用が必要であることを説明されました。
そのうえで、「DXとは、企業そのものの改革である」とまとめられましたが、それは単純なスピードの問題ではなく、組織の機能とプロセスを再構築することが求められるものであり、そのためには環境変化に対するマインドセットを変える必要があり、それにより初めて≪非連続的な変革=非連続的価値創造≫が可能になる、と結ばれました。
講話後の質疑では、講話自体が具体的でとても分かりやすく、刺激的な内容であったため、「セキュリティの問題」、「日本がDXで周回遅れとなった理由」、「CDOを任命されたがどう取り組むべきか(CDOの悩み)」、「DXの勝ちパターンはあるのか」などと、質問が相次ぎましたが、それら一つ一つ丁寧に答えられて、聴講した会員からは「DXの本質が理解できた」、「とても分かりやすく説明されたので、社内での取り組みの参考にしたい」、「苦手意識があったが、真正面から取り組む必要性を理解できた」などと、大変好評を博しました。
その後、会員の近況報告として、山田・あずさ監査法人専務理事、澤井・ダイキン工業執行役員、杉山・SENマーケティング代表、加藤・セガサミーホールディングス執行役員、黒田・東横イン代表取締役社長、安藤・JFEスチール常務執行役員、川崎・ハウス食品グループ本社取締役、西本・広栄化学代表取締役社長、赤尾・資生堂ジャパンエグゼクティブオフィサー、梅田・住宅あんしん保証代表取締役社長から、それぞれコロナ禍の中での対応・工夫など、悲喜こもごもなお話がありました。
引き続いての交流時間では、ゲストを囲み、より突っ込んだ意見交換や、会員間での懇談の輪ができて、今回も大いに盛り上がりました。