一志会 2010年10月に発足した限定メンバーによる
新しい形のコミュニティ
「一志会」第60回の例会が開催されました。
2020.12.07 更新
一志会は、「公の精神」のもとに積極的に社会的責任を果たそうとの想いを共有する大企業経営幹部の「コミュニティー」ですが、11月26日に、コロナウイルス対策に万全を期して、従来とは大きく異なるやり方で、第60回例会を開催しました。
ゲストとして、わが国の知財戦略の第一人者である荒井寿光氏(知財評論家、元内閣官房・初代知的財産戦略推進事務局長)をお迎えして、「米中新冷戦に日本企業はどう対応するか」と題したご講話をいただきました。
荒井氏は1966年東京大学法学部を卒業され、通商産業省(現経済産業省)に入省。その後、通商産業審議官、特許庁長官などを経て、内閣官房・初代知的財産戦略推進事務局長(2003 年~2006年)を歴任されました。知的財産戦略推進事務局長時代には、知的財産戦略推進計画を取りまとめるなどして、日本の知財立国政策の骨格を策定し、推進されました。
その後も、一貫してわが国の成長には、知財の利活用が要であるとして、その重要性を唱え続けられておられる知的財産の専門家で、一柳とは、官僚時代からの長い付き合いがあります。
荒井氏は、まず「米中新冷戦は、単なる経済戦争ではなく、世界覇権の争い」であることを、過去の世界覇権の変遷の歴史を踏まえながら、詳細に説明されました。また、米国の知財に関する主張は、トランプ大統領の≪思いつき≫というよりも、中国の急成長による米国の世界覇権が脅かされるという、米国全体の懸念で成立した「国防権限法」に基づくものであることを強調されました。
中国の急迫は、軍事、経済、技術、それぞれの面で生じており、米国としては看過できなくなってきていること、一方、中国は100年の屈辱(1840年~1945年)を晴らし、中華民族の偉大な復興を目指す(2049年)、という方針で、一段と強い姿勢で臨んできていることから、日本(企業)にとって、選択を迫られることも予想しておかねばならない。
日本としては、「自分の国は自分で守る」という気概で臨むとともに、自由貿易のルール作りの先頭に立ち、知財戦略を積極的に発揮して経済力の強化を図ることが必要である、と話されました。
最後に、企業として備えることとして、①BCP(事業継続計画)に米中リスクを追加する、②サプライチェーンを常時点検する、③独自技術を開発する、④サイバー防衛を強化する、⑤企業秘密管理を強化する、⑥不買・不訪問に備える、⑦言動を慎む、の7つのアドバイスがありました。
質疑では、サイバーの実態、特許の活かし方などについて相次いで質問がありましたが、荒井氏は、一つ一つに丁寧に、本音ベースでのコメントをされました。その中で、「日本では、(海外とは異なり)特許裁判を恐れているため特許の価値が上がらない」、「知財のことが役員会で議論されるようでなければならない」と指摘されたのが印象的でした。
聴講された会員からは、「特許戦略の重要性を認識した」「知財部門に実情を聞いてみたい」などの声をいただきました。
この後、初参加の木上・西日本電信電話取締役の自己紹介、今回で会員を交代する菊池・DBJアセットマネジメント代表取締役会長から退会挨拶、後任の杉元・日本政策投資銀行取締役常務執行役員から自己紹介があり、続いて眞鍋・コスモエコパワー常務取締役、宮階・日本ハム取締役常務執行役員、吉岡・アスクル代表取締役社長、生田・ミクニ代表取締役社長、堆TAKARA & COMPANY代表取締役社長、神野・サーラコーポレーション代表取締役社長から、それぞれ近況報告が行われました。
今回も、交流時間ではいくつもの輪ができ盛り上がりましたが、予定の時刻となり、次回例会での再会を約して、閉会となりました。