一志会 2010年10月に発足した限定メンバーによる
新しい形のコミュニティ
「一志会」第57回の例会が開催されました。
2020.06.17 更新
一志会は、「公の精神」のもとに積極的に社会的責任を果たそうとの想いを共有する大企業経営幹部の「コミュニティー」ですが、6月9日に、コロナウイルス対策に万全を期して、従来とは大きく異なるやり方で、第57回例会を開催しました。
ゲストとして冨田哲郎氏(東日本旅客鉄道株式会社取締役会長)をお迎えして、「地方創生とDX」と題したご講話をいただきました。
冨田氏は、1951年生まれ。東京大学法学部卒業、旧国鉄に入社。
国鉄民営化に早くから深くかかわり、1987年国鉄分割民営化に伴い東日本旅客鉄道に入社。以後、常務取締役総合企画本部副本部長、副社長総合企画本部長などを経て、2012年社長に就任、2018年会長に就任されています。国鉄民営化、その後のJR東日本の経営の中枢を歩み、徹底したお客さま視点に立って、鉄道ネットワークの充実、少子化時代を迎えた中での非鉄道部門の積極的展開、デジタル社会への対応、国際化などに取り組んでこられました。(なお、冨田氏は一志会の創立時のメンバーです。) 当日は、長年にわたり注力されてきた、同社の事業を通じて、営業エリアである東日本各地の活性化についての取組に的を絞って、お話されました。冒頭、旧国鉄入社当時の荒廃した現場での体験を語られましたが、そこに冨田氏の改革の原点《お客様第一、自主自立経営への想い》があると感じました。
まずは、経営の原点として「安全をベースとした安定輸送」の確保を挙げて、《安全は、はじめからあるものではなく、つくりだすもの》であり、そのためには「凡事徹底」(当たり前のことを、ばかにせずに、意識を込めてちゃんとやる=ABC原則)と、「新事挑戦」(日々の小さなイノベーション=改善の積み重ねが、大きなイノベーション=変革につながる)との方針を打ち出して、体質改善にいそしんできた、と話されました。現場を重視し(現地・現物・現人の「三現主義」)、社会の変化に応じた変化が求められることを唱え、その一環として東京だけではなく、地方創生が必要であることを強調され、最近のDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用することで、その可能性が高まっているとの認識を示されました。そして、これまでに、(地元)企業・金融機関・自治体などと協力して、《住みたいまち・働けるまち・訪れたいまち》という切り口から、実際に取り組まれた秋田駅、新潟駅、松本駅などの地域再開発や、農産物の生産、再生可能エネルギーの開発など、様々な事例を説明されました。 講話の中で特に印象的であったのは、社長に就任して、投資基準を、従来の利益率だけではなく、地方にとって有益なものであれば、かりに利益水準が低くても積極的に取り組む、という見直しを行ったことです。上場企業としては効率の良い投資を求められますが、そこに企業の社会的役割という視点を組み込んで果敢に取り組んでいく、というのはSDGsの観点からも評価できるものです。最後に、地方創生なくして日本経済の活性化はなく、企業は、イノベーション・DXを活用して、地域の自助努力を支えるような投資にも力を入れてほしい、と結ばれました。質疑でも、投資判断の考え方、人材活用・中途採用などの質問に対し、率直に答えられ、聴講者から、「講話を聴いて元気が出てきた」、「事業を進めるうえでとても参考になった」など、大変勉強になったとの言葉を数多くいただきました。
この後、今回初参加の日本航空株式会社執行役員の中野星子氏が、推薦者の澤井・ダイキン工業執行役員とともに登壇し、お二人から挨拶がありました。今回は、できるだけ多くの会員から近況を報告してもらうこととし、満倉・全日本空輸取締役専務執行役員、石井・石井鉄工所専務取締役、藪・蝶理取締役常務執行役員、太田・岩谷産業取締役専務執行役員、荒木・日立製作所理事、神野・サーラコーポレーション代表取締役社長、柳生・プチファーマシスト代表取締役、西本・住友化学取締役、松浦・三井住友銀行専務執行役員、清明・マネックスグループ代表執行役COO、野村・興和取締役常務執行役員、福井・トヨタモビリティサービス取締役専務執行役員、下村・東日本旅客鉄道執行役員から、それぞれお話をいただきました。