一志会 2010年10月に発足した限定メンバーによる
新しい形のコミュニティ
「一志会」第85回の例会(講師:田和宏氏 ㈱日本総合研究所顧問)が開催されました。
2025.02.26 更新
第85回一志会例会 レポート 2025年2月25日

一志会は、「公の精神」のもとに積極的に社会的責任を果たそうとの想いを共有する企業経営幹部の「コミュニティー」です。2月25日(火)に、第85回例会を開催しました。
今回は田和宏氏(㈱日本総合研究所顧問)から、「マネジメントの視点から見た、我が国の経済政策運営」と題したご講話をいただきました。

田和様は入省時に上司として一柳と出会い、それからの長いお付き合いを紹介された後本題に入られました。田和様は40年間経済政策立案に携わってきた経験を踏まえ、この間世の中が本当に変わってきたのかという問題意識から、経済政策はあるべき論で考えるのではなく、世の中を変えるために実行することが大切だとお話しされました。また実現するという視点は、国家の在り方を考える時だけでなく、企業経営においても同じであると話されました。
まず1970年代の佐藤内閣や、岸田内閣の新しい資本主義までビジョンとその背景にある思想を振り返り、政策課題の継続性についてお話しされました。また最近の世論調査から、国民の意識の変化として、日本が誇るべきものが経済的繁栄や教育から治安・自然・歴史・文化などに変わってきており、30代以降の現役世代は心の豊かさより物質的豊かさを求めている事、さらに政府への要望が高まる中、財政健全化の推進が進まない現状を話されました。
このような背景を踏まえ、経済政策運営のマネジメントとは、政策を実行し、社会課題の解決を含め、成果を出していくこと。そのためには政策を決める力や政策の運びにおける新たな取組みの必要性を話されました。その中で日本を含め世界中で既存政治への不信感が生まれつつある状況は政策を決める力という点で懸念されるものの、世界の大きな変化から生じる外圧は総意形成のチャンスであることも示唆されました。
また経済政策の実効性を高めていくために、課題先進国の道筋を描き、物価高を構造的課題として取組むとともに、成長力を強化するため4つの成長要素(人的資本、デジタル化、規模の経済性、知識創造)を活かしてチャレンジし、環境変化に柔軟に対応することの大切さを説かれました。
続いて行われた質疑応答では、30代に経済的ゆとりがないという世論の評価や、政策の短期と長期をつなげるために必要な事後検証を含めたサイクルに関して、さらに多様性を活かす仕組みや競争に勝つための施策について、活発な質疑が行われました。田和様は国民が何に不満を感じているかを知ることが大事だが、課題ベースに落として、何をやるべきかを検討する事も必要であること。また事後検証に必要なリソースの問題についてのお話や競争に勝つために特定の産業分野を育てるというよりもファンクションに注力し育てることを示唆されました。

会員からは、「国際情勢や世代の変化によって、翻弄されている日本の現況、政策課題について、理解が深まりました。」、「最近の世論調査と世相のまとめは大変参考になりました。 国の現状を参考に個人や自社がマインドセットする必要性を再確認しました。」、「企業のマネジメントと同様の課題を抱えている点。ビジョンにはしっかり哲学に基づいた内容が含まれていることが分かった。そのビジョンから後のプロセスに改善の余地があると認識した。翻って自社の経営においてもそういったマネジメントのポイントを意識したい。」、「田和先生の冷静でち密な分析は、日本の政治を間近で見てこられた方にしか見えない貴重なお話でした。」など多くの感想が寄せられました。

この後、会員卓話を松浦公男㈱ハーフ・センチュリー・モア代表取締役副社長より「老後ひとり難民対策について」をテーマに、身につまされる身近な問題と対策について卓話をいただきました。
続いて新会員の金光智行キユーピー常務執行役員からご挨拶をいただき、杉山・SENマーケティング事務所代表、梅田・住宅あんしん保証代表取締役社長、中山・蝶理上席執行役員、吉岡・アスクル代表取締役社長CEO、加藤・セガサミーホールディングス執行役員、小古井・東日本旅客鉄道戦略・プラットフォーム部門長、佐藤・東京電力パワーグリッド常務執行役員、タン・エイピーピー・ジャパン代表取締役会長兼社長、西本・広栄化学代表取締役社長、古川・TOKYO企業情報代表取締役から近況報告をいただきました。




歓談交流時には、会場の至る所で会員間の談の輪ができ、にぎやかに談笑が続く中、次回例会での再会を約して、閉会となりました。
*田和宏氏経歴
愛媛県松山市出身。
1984年(昭和59年)、東京大学経済学部を卒業し、経済企画庁へ入庁。
堺屋太一経済企画庁長官秘書官、内閣府政策統括官(経済財政 – 経済社会システム担当)付参事官、安倍晋三官房長官秘書官、内閣府人事課長などを歴任。この間、通産省中小企業庁金融課、大蔵省主計局防衛3係、在モスクワ大使館一等書記官などへの出向を経て、経済財政諮問会議の運営等に携わった。
2012年(平成24年)12月、内閣官房日本経済再生総合事務局次長に就任。
2014年(平成26年)1月、内閣府大臣官房総括審議官に就任。
同年7月、内閣府政策統括官(経済財政分析担当)に就任。
2016年(平成28年)6月、内閣府政策統括官(経済社会システム担当)、(併)規制改革推進室長に就任。
2019年(令和元年)7月、内閣府審議官に就任。
2021年(令和3年)9月、内閣府事務次官に就任。10月、内閣官房新しい資本主義実現本部事務局長代理就任。
2024年(令和6年)7月、退任。
2025年1月、株式会社日本総合研究所顧問就任。2025年2月26日(一社)日本の未来構築研究機構 理事