一志会 2010年10月に発足した限定メンバーによる
新しい形のコミュニティ

「一志会」第82回の例会が開催されました。

2024.08.30 更新

【望月晴文氏】

  一志会は、「公の精神」のもとに積極的に社会的責任を果たそうとの想いを共有する企業経営幹部の「コミュニティー」です。8月29日(木)に、第82回例会を開催しました。
 ゲストとして、一柳の長い友人である望月晴文氏(東京中小企業投資育成㈱特別顧問、日立製作所社外取締役、元内閣官房参与、元経済産業事務次官)をお迎えし、「経営改革における社外取締役の役割と責任――日立製作所の10年の検証より」と題したご講話をいただきました。

 望月氏は、まず2008年のリーマン危機で7873億の赤字を計上し、日本国内のインフラを支える企業からグローバル企業への変貌をはかった日立の事業構造改革について説明されました。日立はグローバル企業を目指したことで、ライバルも国内企業からGE、ジーメンスなどのグローバル企業に変り、その結果グローバル競争に勝つためには、低収益率の改善が必達目標となったと説明されました。
  次に、日立の強みであり実績もある制御・運用系のOT×IT×プロダクト・システムで豊かな社会を実現する新たな価値を提供するとともに、低収益事業の構造改革と注力事業への集中投資を行うことで、売上げの30%(3兆円超)の事業を入れ替え、22社あった連結上場会社も現在はゼロとなったと語られました。
 具体的には、中計ごとに目標を定め、段階的に復活から成長に向けて、社会イノベーション事業の成長、経営体制・ガバナンス強化、事業ポートフォリオ再編、経営基盤強化、グローバル事業基盤の拡充という取り組みを推進されたとのことです。
 この時の、取締役会の使命は「会社のありたい姿のビジョンを共有し、戦略を議論する」ことだったと話されました。また社外取締役は経営者のリーダーシップ(実行力・スピード・セカンドプラン)とM&AにおいてはPMI(Pre Merger Integration)を要求したとのことです。
 またグローバルリーダーの成功した企業の元CEOを社外取締役に多数登用することで、執行役が取締役会で訓練され、グローバル競争に勝てる企業になったとのことでした。
 具体的には、統合した日立ABBパワーグリッドのグローバルオペレーションを日立全社に活用するとともに、Global Logicの買収によりグローバルに顧客のデジタルトランスメーションを拡大した結果、2021年度から市場も日立の評価を変えたと話され、ご講話を締めくくりました。。

 質疑応答では、事業の入れ替えにおいて大変難しい事業売却について問われ、「時間をかけてでも納得感のあるポジティブな提案を待つことで、事業売却を進めた」とのお答えがありました。また「これだけ大胆な急激な改革を成し遂げた原動力」はとの問いには、「覚悟を持ち、ビジョンを語り、かつ根幹に問題提起できる改革者をリーダーに選んだことが重要であった」と回答されました。参加者からは、「本当にダイナミックなお話で、巨艦日立がなぜ短期間で変わることができたのかという経営編を教えていただきました」や「ビジネス誌等で読んではいたものの、実際に中にいらした方が、客観的に分析されたお話はとても興味深かった」などの感想が聞かれました。

 その後、会員企業の人事異動などに伴う新会員の重政・JFEスチール常務執行役員と前任の赤木・JFEスチール常務執行役員からそれぞれ挨拶がありました。次いで、新会員の槇山・関西電力株式会社執行役常務から挨拶がありました。
  次に、『Forbes JAPAN』の2024年「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」でBUSINESS & FINANCE & IMPACT部門で選出された大槻 祐依氏(株式会社 FinT 代表取締役)から受賞についてのご報告がありました。
 また、石井仁・国際自動車 代表取締役社長、松本・ソニー副社長、奥田・阪急電鉄 常務取締役、藤田・品川リフラクトリーズ 執行役員、近藤・あずさ監査法人 専務理事、山本 ANA総合研究所 取締役、三村・キッコーマン 常務執行役員、澤井・ダイキン工業 常務執行役員 から近況報告をいただきました。

    【重政氏】        【槇山氏】              【大槻氏】       【石井仁氏(Tシャツに注目‼】

 今回も、交流時間では、ゲストを囲んでの意見交換や、会員間の懇談の輪がいくつもできました。にぎやかに談笑が続く中で予定の時刻を迎え、次回例会での再会を約して、閉会となりました。

         【講義風景】                        【一柳シャンパンで乾杯】

*望月晴文氏の経歴
 1949年生まれ、1973年京都大学(法)卒後、通商産業省(現:経済産業省)入省、中小企業庁長官、資源エネルギー庁長官などを経て、2008年、経済産業事務次官。2010年退官後、内閣官房参与に就任(2011年9月まで)。2013年東京中小企業投資育成株式会社代表取締役社長に就任。2012年から日立製作所社外取締役(2018年取締役会議長)、2014年から伊藤忠商事社外監査役(2017年取締役)などを歴任。現在は、日本電気社外取締役、安藤ハザマ社外取締役、一般財団法人安全保障貿易情報センター理事長、東京中小企業投資育成特別顧問を務めている。

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