一志会 2010年10月に発足した限定メンバーによる
新しい形のコミュニティ
「一志会」第80回の例会が開催されました。
2024.04.22 更新
一志会は、「公の精神」のもとに積極的に社会的責任を果たそうとの想いを共有する企業経営幹部(大企業の経営幹部、2世・3世の社長、ベンチャーの社長)の「コミュニティー」です。4月18日(木)に、第80回例会を開催しました。
ゲストとして、一柳の長い友人である十市勉氏(日本エネルギー経済研究所客員研究員)をお迎えし、「激動する国際エネルギー情勢と日本の国家戦略」と題したご講話をいただきました。十市氏は、エネルギー問題のプロ中のプロで、一柳が資源エネルギー庁に勤める頃からずっと今日まで、エネルギー分野の先生役の存在です。
十市氏は、まず「分断化する世界のエネルギー情勢」として、ロシア・中東での戦争、米大統領選の動向、中国、グローバルサウスの影響力拡大等、世界のエネルギー情勢が不安定化する中、原油価格も高止まりしており、日本経済への影響が懸念されると説明されました。
次に「脱炭素化とエネルギー移行」として、先進国のCO2排出量は徐々に減っている一方、中国、インドなど経済発展を遂げる途上国では増加している。また、風力、太陽光などの再エネについては、電気に変えるための重要鉱物資源の加工・精錬など、中国に依存した状態であり、サプライチェーンの確保が重要と語られました。
最後に、「国家エネルギー戦略の再構築を」として、国際情勢(安全保障)、気候変動、技術革新など日本を取り巻く状況を踏まえ、第7次エネルギー基本計画(2024年)に向けた日本の課題として、電力自由化での電源投資の抑制、不安定な再エネの急増、原発再稼働の遅れなど、電力の安定供給への懸念などを挙げられました。
そして、取り組むべきこととして、原子力の活用強化、カーボンプライシングの導入、次世代エネルギーへの技術開発促進について述べた上で、国家エネルギー戦略再構築のポイントとして、エネルギー安全保障・脱炭素における国際協力・連携(欧米、印、豪、アジア)の強化、及び多様性を持ったエネルギーミックスの実現(安定供給と脱炭素のバランスを取った両立や低炭素技術のイノベーション、官民協調)について語り、講話を結びました。
質疑応答では、「日本は再エネに転換しようにもレアメタルなど他国に抑えられて自立できるのか?」との質問に対し、「エネルギーの安全保障はリスク分散に尽きる」、一柳から「日本で開発されたペロブスカイトは量産化では中国に抜かれているが、主原料のヨウ素は日本で産出される(世界で2番目)」と補足、また、「脱炭素はコストをかけてでも進めるべきなのか、日本の現実的な立ち位置は?」には、「答えはない、理想と現実のギャップを埋めるのは最終的には選挙民であり、政治が決める。ただ世界のCO2を減らすためには途上国の排出を減らす必要があり、日本がイニシアチブをとるのが大事。」と回答され、参加者はなるほどと頷きながら聞き入っていました。
講演後、一柳から、コロナ5類移行後の第75回(2023年6月7日)の例会より、3回連続で欠席された場合は、自然退会となる本会のルール適用についての説明がありました。
また、ダイキン工業株式会社常務執行役員の澤井様のご厚意により、9月に軽井沢にて行われる特別例会についてのお知らせを致しました。
その後、新会員の大槻・FinT代表取締役、佐渡島・セーフィー代表取締役社長CEOから挨拶がありました。次いで会員企業の人事異動などに伴う新会員の馬渕・三井住友銀行専務執行役員コーポレートバンキング本部長と前任の小野・三井住友銀行顧問、新会員の三井・レシップホールディングス常務取締役からそれぞれ挨拶がありました。
また、石井・石井鐵工所代表取締役社長、佐渡・KPMGコンサルティング執行役員パートナー、沼田・あいおいニッセイ同和損害保険常務執行役員、吉村・丸一鋼管代表取締役社長兼COO、生田・ミクニ代表取締役社長CEO兼COO、奥・セブン&アイ・ホールディングス執行役員総務法務本部長、久保・パラマウントベッド執行役員営業本部副本部長兼東京支店長から近況報告をいただきました。
今回も、交流時間では、ゲストを囲んでの意見交換や、会員間の懇談の輪がいくつもできました。にぎやかに談笑が続く中で予定の時刻を迎えました。
次回の例会は、国際社会経済研究所理事長 藤沢 久美氏をお迎えして『社外取締役の目でみた成長する企業とその経営者とは(仮)』というテーマで卓話を頂戴する予定でございます。
*十市 勉氏の経歴* 1945年、大阪府生まれ。1973年、東京大学大学院地球物理コース博士課程修了(理学博士)。日本エネルギー経済研究所に入所後、マサチューセッツ工科大学エネルギー研究所 客員研究員(1983~1985年)、日本エネルギー経済研究所総合研究部長、専務理事、首席研究員、顧問などを経て、2021年より客員研究員。エネルギー・地球環境問題を専門分野として研究されています。