構想エネルギー21研究会エネルギー産業構造の変革期が訪れようとしています
一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第148回勉強会を開催しました
2023.09.25 更新
2023年9月19日 当社社長一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第148回勉強会に三菱電機株式会社
常務執行役/元経済産業省資源エネルギー庁長官日下部 聡様を講師にお招きし、『3.11以降の原子力政策~11年考えたこと、23年の現実、今後~』とのテーマでお話しを頂きました。
はじめに原子力の在り方を考える前に、3.11福島の事故を契機に忘れてはならない4つの大きな政治判断、決断に関した経験を説明されました。
①第一に事故原因。事故原因は備えの不備です。津波想定6.1m→実績13.1m、避難計画8km圏内のみ→実際には30km以上も避難。12年9月に規制委員会が発足するまでは政治決断でストレステストを行い大飯原発の再稼働を実施、その後、規制員会が科学的な知見で安全確保となりました。
②二つ目は福島です。避難者は12年16万人、現在はなお2.7万人、まだ道半ばです。徐染では環境省と国土交通省が、賠償では文科省が、復興には国交省が参画、全政府挙げての体制で実施しています。処理水放出開始など福島復興は進みつつありますが、福島復興へのこのコミットメントが大事です。
③三つ目は東電です。事故責任は国ではなく東電にある、東電に責任はあるが破綻させずに再生する、この政治決断も忘れてはいけません。東電の再建に向けては柏崎原発の再稼働がカギになりますが、この時に、事故責任を自覚した東電の経営改革や事故の風化防止の取組みなどが大変重要になります。
④4つ目は電力不足への対処です。11年3月計画停電が実施されました。その後は無かったが昨年夏7年ぶりに節電要請が出されました。電力が不足すると経済社会が止まる。この緊張感をもち、電源投資や人材投資がこれからも不可欠であるということも忘れてはなりません。
続いて、今後の原子力政策に関し恒常的な仕組みの構築が必要との論点から以下の4点について説明が有りました。
①第一が原発依存度。震災後、再稼働容認から開発解禁、そして22年になり新増設に舵を切りました。2050年カーボンニュートラルへの道筋で原子力は不可欠ですが、これ単独では難しい。再エネ・水素などの全方位での技術革新を促す複数シナリオアプローチが重要になります。脱原発という選択に関しては、青森県との約束(中間貯蔵であって最終処分場でない)と日本に各濃縮の権限を与えた日米原子力協定の見直しという論点があり、容易ではないことを指摘しなければなりません。
②第二がバックエンド。安定した地層処分を科学的な知見の帰結とし、適地マップを公表し、地元との対話を入念に行うプロセスが開始しているが、これが大事なプロセスです。
③第三が脱炭素。FITの制度の改変が進められています。GXという大きな目標に向けた国民負担のバランスが取れた制度設計がこれからの課題となります。
④第四が電力自由化と東電等の事業体改革。これからのエネルギー選択に欠かせないのは技術力、配電系や再エネ系などの新ビジネスの開発です。エネルギー産業の経営改革が大変重要となります。
質疑応答では、「3.11福島の土地の国有化議論」、「バックエンドにおけるサイクルの必要性」、「最終処分場のマスコミの採り上げ方」、「原発の国有民営化や送電会社の統一の議論」などについての率直な意見交換で大いに盛り上がりました。
今回の出席者からは、「4人の政権に関与し原子力政策の決定過程で活躍されてきた日下部講師のご苦労を、利害関係が多岐に亙る具体的テーマの説明により良く理解出来ました。」或いは「政治の力強い意思決定のコミットメントと産業界の力強い技術に対するコミットメントにより次の選択肢が広がる、との講師の言葉に感銘を受けました。」などの声が有りました。
【日下部聡講師略歴】
学 歴 1982 年 3 月 横浜国立大学 経済学部 卒業
業 歴 1982 年 4 月 通商産業省 入省
2007 年 7 月 経済産業省 大臣官房秘書課長
2010 年 7 月 経済産業省 大臣官房審議官(経済産業政策局担当)
2010 年 10 月 内閣官房内閣審議官(国家戦略室)
2012 年 9 月 経済産業省 総括審議官
2013 年 6 月 経済産業省 官房長
2015 年 7 月 経済産業省 資源エネルギー庁長官
2018 年 7 月 経済産業省 退官
2018 年 11 月 東京海上日動火災保険株式会社 顧問
2019 年 7 月 三菱電機株式会社 顧問
2020 年 4 月 常務執行役 産業政策渉外、輸出管理、知的財産渉外、知的財産担当
2020 年 10 月 常務執行役 産業政策渉外、経済安全保障、輸出管理、知的財産渉外、知的財産担当
2022 年 1 月 常務執行役 CRO(リスクマネジメント、経済安全保障、輸出管理担当)、
産業政策渉外、知的財産渉外、知的財産担当
2022 年 4 月 常務執行役 CRO(法務・コンプライアンス、リスクマネジメント、経済安全保障、輸出管理担当)