構想エネルギー21研究会エネルギー産業構造の変革期が訪れようとしています
一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第145回勉強会を開催しました
2023.03.20 更新
2023年3月16日 当社社長一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第145回勉強会を開催しました。今回は『石油、天然ガスの今後の動向について』と題しまして、代表一柳の通商産業省の後輩でもあります株式会社INPEX代表取締役会長 北村俊昭様にお話しを頂きました。
はじめに、現在のグローバルエネルギーの情勢についての説明がありました。
現在のグローバルエネルギー危機の始まりは、ロシアのウクライナ侵攻よりも前の2021年夏頃とのことです。その理由はシンプルですが、エネルギー需要の伸びに対し供給力が不足しており、それは現在も継続しています。脱炭素化の流れの中で、上流投資は2014年の8,000億ドルを最高にほぼ半減に低迷しています。ダニエル・ヤーギン氏は、この状況を「先制的過少投資」と呼び、時期尚早的に上流投資がダウンしていることが、現下のグローバルエネルギー危機の根本原因としています。
次に、昨年の欧州の天然ガス危機についてお話しされました。
欧州は、天然ガスの消費量の1/3の年間1億2千万トン(LNG換算)を安いロシアのパイプラインガスに依存しておりました。それが昨年は5千万トン(同)の供給に減少し、それを米国からの購入と節約のそれぞれ5千万トン(同)でカバーし、在庫を差引き3千万トン(同)増やした結果となっております。その要因として3つの幸運がありましたが、それらが今年以降続くとは限りません。即ち、・暖冬だったこと・米国のLNGの供給増・大ユーザーの中国のゼロコロナ政策による需要減です。他方この反面、3つの犠牲は大きい。欧州の買い漁りにより高いLNGを買えない南アジア諸国の犠牲、電気ガス料金が2~3倍になった欧州のエネルギープア(低所得者層)の犠牲、そしてエネルギー多消費産業の欧州からの退出などであります。
日本のエネルギー政策(第6次エネルギー基本計画)上の、石油・天然ガス開発産業の役割は、①国産を含む石油・天然ガスの自主開発比率を現在の40%から2030年度において50%以上、2040年度に60%以上に引き上げること、そして、②CCS、水素・アンモニアなど脱炭素技術・脱炭素燃料のメインプレイヤーとしての役割です。
当社は、「ナショナルフラッグシップ・オイルカンパニー」として、先ずは石油・天然ガスの自主開発をリードしていくとともに、エネルギートランスフォーメーションのパイオニアとして、石油・天然ガスから水素、再エネ電力まで、多様でクリーンなエネルギーを安定供給することを通じてネットゼロカーボン社会の実現に貢献するとしています。具体的案件としては、今後は、石油・天然ガス分野でこれまで当社の発展を牽引してきたアブダビの原油開発を更に進めることと、日本初のLNGオペレーターを務めるオーストラリアのイクシスLNGの一層の拡大、更にはインドネシアでの新たなLNGプロジェクトへの取り組みを進めます。また、ネットゼロカーボン分野ではCCS・水素・アンモニア等への取り組みを精力的に進めていきます。
質疑応答では、「化石燃料投資へのメッセージ発信上の留意点」、「CCSのゲームチェンジャーとしての行方」、「大型プロジェクトのファイナンス、マーケティング等のマネージメント手法」、「民間企業と役所の思考形態の相違点」などについての率直な意見交換で盛り上がりました。
今回の出席者からは、「北村講師には、真摯な説明や応答振りに感銘を受けました。ナショナルフラッグシップ・オイルカンパニーのリーダーとして、自主開発を通じてわが国のエネルギーの安定供給に大いに尽力して頂くことを期待します。」或いは「我が国のカーボンニュートラル実現のため、新しい分野や新規技術革新への積極的取組みを希望します。」などの声がありました。
また、終了後の懇談会では、ワインを飲みながらのエネルギーのみならず多方面の話題で会話を楽しみました。
【講師ご略歴】
北村俊昭 (きたむら としあき) 様
最終学歴 1972年3月 東京大学法学部卒
職歴 1972年4月 通商産業省(現経済産業省)入省
2002年7月 貿易経済協力局長
2003年7月 製造産業局長
2004年6月 通商政策局長
2006年7月 経済産業審議官
2007年11月 東京海上日動火災保険株式会社 顧問
2009年8月 国際石油帝石株式会社 副社長執行役員
2010年6月 代表取締役社長
2018年6月 代表取締役会長
2021年4月 社名変更 株式会社INPEX 代表取締役会長(現)