一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第140回勉強会を開催しました
2022.07.22 更新
2022年7月20日 当社社長一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第140回勉強会を開催しました。今回は学習院大学名誉教授 南部鶴彦様に登壇頂き、「電力システム改革の評価と今後の修正点」とのテーマでお話しを頂きました。
はじめに、電気という商品がどのように生産され、手元に届けられるのか、そのメカニズムについてほとんど知られていないということで、電気の特性について説明がありました。
電力産業は電気機器の保有者が存在しなければ成り立ちません。電力供給者と電力ユーザーは相互に依存しあう関係にあり、電力産業を電力会社からだけ見るのは誤りです。
電流として流れてくる電子のチャージによってコンセントを通じて電場が発生するので電気機器は作動します。電場は光速で回路上を移動します。
次に、ここ30年間にわたる電力自由化の推進過程の反省を踏まえ、今後の在り方の議論をする際の留意点は以下の3点であります。
・改革、自由化、競争という言葉それ自体が善であると唱えられ、総括原価や内部相互補助はネガティブに扱われるなどのレトリックの氾濫や混乱がありましたが、エコノミストの発言には要注意です
・3.11の福島第1原発事故後の10年間で制度設計が大きくゆがんでしまいましたが、これを是正する制度設計はすぐ始めたほうが良いです。
・電力システムのあり方を検討する方々は、家計や生活者の要望を代表する人以外は、電力について基本的物理学の知識を有する識者を前提に選んでほしい。
今後の電力システムの見直しの方向性についてのお話しがありました。
まず関東や阪神地区などの大規模な需要を満たすことが第一です。更に全国のユーザーの様々な所在地から発生するデマンドに応じて、電気の特性に対応した合理的な安定供給センターをどのように構築するかということが大事であると結びました。
質疑応答では、「国会や行政での検討・議論のスタイル」、「電力会社の民営国有化の可能性」、「電気料金等の国際比較の意味合い」などについての率直な意見交換で盛り上がりました。
今回の出席者からは、「南部講師の話される合理的で論理的な検討方法が、今後の電力システム改革の見直し議論に反映されることを期待します。」或いは「電力産業の発電、送電、配電が一体となっている特質を良く理解して、見直し議論を深めてほしい。」などの声がありました。
また、終了後の懇談会では、コロナ感染再拡大に留意して、マスク着用の会話を楽しみました。
【講師ご略歴】
南部 鶴彦様
1942年11月6日 東京生まれ
1966年3月 東京大学経済学部卒業
1973年3月 武蔵大学大学院経済学研究科博士課程修了満期退学
武蔵大学経済学部助手
1975年4月 同 助教授
1976年9月 学習院大学経済学部助教授
1978~1980年 ルヴァン大学経済学部客員教授
1979年4月 学習院大学経済学部教授
現 学習院大学名誉教授
(著書)
『産業組織と公共政策の理論』 日本経済新聞社,1982年
『テレコム・エコノミクス』 日本経済新聞社,1986年
『日本の電機通信』(奥野正寛・鈴木興太郎氏と共編著) 日本経済新聞社,1993年
『ネットワーク産業の展望』(伊藤成康氏との共編著) 日本評論社,1994年
『医薬品産業組織論』(編著,東京大学出版会、2002年)
『エナジー,エコノミクス』(西村陽氏と共著、日本評論社、2002年)
『電力自由化の制度設計』(編著)東京大学出版会、2003年
『クリーンエネルギー国家の戦略的構築』(永野芳宣氏と共著)財政研究所,2012年
『エナジー・エコノミクス第2版』(日本評論社,2017年)