構想エネルギー21研究会エネルギー産業構造の変革期が訪れようとしています
一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第134回勉強会を開催しました
2021.09.22 更新
2021年9月16日当社社長一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第134回勉強会を開催しました。
今回はJ-POWER(電源開発株式会社)取締役副社長執行役員尾ノ井芳樹様に登壇頂き、「CCS・CCUSへの期待-カーボンニュートラルに向かうトランジ ション期のみちすじ」とのテーマでお話し頂きました 。
はじめに、CCS、CCUの概要についての説明です。
CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)は、「CO2回収」-「輸送」-「貯留」のチェーンで成立します。貯留には上部にCO2を通さない岩盤などからなる遮蔽層が必要で、貯留の類型には地中層に残留する(残留トラッピング)、上部の遮蔽層で遮蔽される(構造トラッピング)、地層水に溶解する(溶解トラッピング)、長い時間を掛けて鉱物化する(鉱物トラッピング)の4つがあります。現在世界の26プロジェクトで年間4千万トンの貯留の実績があります。世界には約7兆トン以上のCO2貯留ポテンシャルが有ると推定され、2018年の世界のCO2排出実績335億トンの数百年以上の貯留ポテンシャルが期待されています 。
CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)では、世界の需要量は2.3億トンと世界の排出量の1%以下で、主な用途は、尿素肥料製造とCO2-EOR(石油増進回収法)の2つが占めています。
次に、カーボンニュートラル実現に向けてのCCS・CCUの役割です。
カーボンニュートラルに向けてCO2フリー水素・アンモニア燃料が注目されています。再エネ由来水素に比べ現状のトランジション期では、コスト競争力が見込める化石由来CO2フリー水素・アンモニア燃料の製造にはCCUSは必須であると、強調されました。IEAの2℃シナリオでも、CCUSは現在の年間4千万トンから2050年には140倍の年間56億トンが必要とされると期待されています。
我が国のCCS実証実験では、苫小牧の国内初となるCCS一貫システムが国際的にも有名です。商用運転中の製油所の水素製造装置の含有ガスからCO2を分離回収し、圧入基地からCO2を海底下の貯留槽への圧入が2019年12月に完了しました。現在様々なモニタリングがなされています。
更に、大崎クールジェンプロジェクトの石炭ガス化技術・CO2分離回収技術実証実験や、水素製造ではJ-POWER、物流では川崎重工業、岩谷産業などが参加されている「日豪水素サプライチェーン構築実証実験」では、豪州ビクトリア州の褐炭から水素を製造・貯蔵・輸送し、日本国内における水素エネルギー利用までをサプライチェーンとして構築するものが注目されています。同州にはCCSに適したエリアが近傍にありゼロエミ水素への期待が高まっています。
今後、国内でCCS展開を図っていくためには、適地調査が重要になると共に、法制度、社会受容性、インセンティブ付与、責任移管、輸送・貯留サイトへの第三者アクセスなど、官民のリスクアロケーションと協力、制度整備と事業構造に伴う経済性とファイナンス方式に関する工夫、更にはグローバルな課題である温暖化ガス削減には多国間協力が必要と結ばれました。
質疑応答では、「日本のエネルギー業界がCCSを強力に取組むための課題」、「コスト分析・試算」、「化石燃料の将来展望」などについての率直な意見交換で大いに盛り上がりました。
今回の参加者からは、「カーボンニュートラル実現のため、再エネと化石燃料との2項対立ではなく、トランジション期の化石燃料のゼロエミ実現のための2正面作戦を取るべきとの講師の説明に大いに同感します。」或いは「J-POWERと云えば発電とのイメージが強烈ですが、水素をキーに事業領域の拡大の可能性を追求とのこと、興味を持って見守っていきたい。」などの声が有りました。
【講師ご略歴】
○尾ノ井芳樹様
学 歴: 京都大学工学部卒, 1979年
資 格: 京都大学博士(工学), 2006年
研 修: ハーバードビジネススクール (AMP163), 2002年
職 歴:
2018年6月-現在 取締役副社長執行役員
国際事業本部長
2015年6月 取締役常務執行役員
国際事業本部長
2013年6月 常務執行役員
設備企画(国内)
Chairman, J-Power USA (非常勤)
2011年1月 執行役員(タイ王国駐在)
Chairman, J-Power Generation (Thailand) Co., Ltd.
2009年7月 執行役員設備企画部長
理事(非常勤)日本卸電力取引所(JEPX)
2006年7月 設備企画部長(自由化対応電力プロジェクト開発)
1995年7月 国際事業部課長(海外発電事業投資企画)
1992年10月 沖縄海水揚水建設所工事課長
1990年7月 海外経済協力基金(OECF, 現JICA) 経済調査員(電力セクター)
1979年4月 電源開発株式会社入社