構想エネルギー21研究会エネルギー産業構造の変革期が訪れようとしています
一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第131回勉強会を開催しました
2021.03.18 更新
2021年3月16日 当社社長一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第131回勉強会を開催しました。
今回は、関西電力㈱顧問 藤洋作様に登壇頂き、「わが国のエネルギー事情と原子力および最終処分の現状について」とのテーマでお話し頂きました。
はじめに、我が国の原子力発電の歩みについての説明がありました。
1966年初めての商業用原発として東海発電所が運転を開始し、1970年国内初の加圧水型商業炉の美浜発電所1号機が運転開始しました。その後エネルギー安定供給に向けた原発の積極的導入により1998年には電力需要のうちの原発比率はピークの37.4%に達しました。東日本大震災の直前の2010年にはエネルギー自給比率は20.3%となりましたが、その後大幅に低下し2018年は11.8%まで減少しています。現在、安全対策の取組が求められた新規制基準の適合審査の申請済みプラントは27基であり、再稼働に至ったのは9基です。
次に、高レベル放射性廃棄物の地層処分についてのお話しがありました。
高レベル放射性廃棄物とは、原発で使い終わった使用済燃料をリサイクルする際に残る廃液を、ガラスと溶かし合わせて固めたガラス固化体です。この量は使用済燃料の約5%です。 この廃棄物の放射能が一般のウラン鉱石レベルまで減衰するには数万年掛かりますが、このガラス固化体を鉄製オーバーパックに封入すると50年後には、1m離れた放射線量はCTスキャン1回で受ける量より少ないとのことです。
数万年以上の長期間人間が管理し続けられるかとの疑問には、世界各国で様々な処分方法が検討されてきましたが、300mより深い地中に埋める「地層処分」が最適な方法であることが国際的に共通の認識となっています。今後発生すると見込まれる量を勘案しガラス固化体を4万本以上埋設できる施設を計画中です。処分費用は約4兆円と見込まれています。
更に、昨年末正式表明された「2050年カーボンニュートラル」と原発との関連について説明がありました。
そもそもエネルギーの源泉は、太陽の核融合=再生可能エネルギーと原子力核分裂=原発、更に重力の3つです。カーボンニュートラルでは化石燃料はCCS付きでなければ使えません。 カーボンニュートラル社会における最終エネルギーは、原則電気か水素の使用とする必要があり、電力需要は増加する見込みです。現在原子力を利用している国の多くは、カーボンニュートラルを表明し将来も原子力利用を継続する見通しです。安全性、経済性等の更なる向上に向けて、原子力イノベーションは重要な課題で軽水炉の安全性向上は勿論小型モジュール炉やその他革新炉の研究開発が進展しているとのことです。
2050年のカーボンニュートラルを目指すためには、再エネの最大限の導入を前提としても、3E+Sの観点から既に確立した脱炭素技術である原発の最大限の活用が必要との、見解を表明されました。
質疑応答では、「原子力の減衰期間を短縮する高速炉或いは地熱やメタネーションなどの活用方法」、「資源小国の我が国における原子力利用のためのエネルギーインテリジェンスの高め方」などについての率直な意見交換で大いに盛り上がりました。
今回の出席者からは、「高レベル放射性廃棄物の地層処分の正確な理解を深めることが出来、大変参考になった。子や孫の為にも我が国における原発の位置付けを自分事として考えたい。」並びに「年齢を感じさせない講師の取組姿勢に感銘を受けました。最終処分場の設置が進むために何が出来るか考えていきたい。」などの声が有りました。
【講師ご略歴】
○ 藤 洋作 様
生年月日 昭和12年9月14日(満83歳)
最終学歴 昭和35年3月 京都大学工学部電気工学科卒
職 歴 昭和35年4月 関西電力株式会社 入社
平成 5年6月 同 社 取締役
平成11年6月 同 社 代表取締役副社長
平成13年6月 同 社 代表取締役社長
平成19年6月 同 社 相談役
平成24年7月 同 社 顧問
(現在に至る)
他の団体役員への兼職状況(2021年1月末現在、五十音順)
株式会社 原子力安全システム研究所 代表取締役会長 H11.6~
原子力発電環境整備機構 副理事長 H26.7~
一般財団法人 省エネルギーセンター 会長 H25.7~