構想エネルギー21研究会エネルギー産業構造の変革期が訪れようとしています
一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第130回勉強会を開催しました
2021.01.25 更新
2021年1月19日 当社社長一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第130回勉強会を開催しました。
今回は、一般財団日本エネルギー経済研究所(以下「IEEJ」)専務理事・首席研究員の小山堅様をお招きし、『コロナ禍で激動する内外エネルギー情勢の展望と課題』とのテーマでお話しを頂きました。
はじめに、WTI石油価格の動向に触れました。2020年の4月には、コロナ禍を主要因とする需要の急速な減退、「需要の蒸発」現象の影響下で、先物価格は史上初めてマイナス価格になりました。その後OPECプラスの大幅減産の実現により価格は持ち直して推移しました。2021年の需給見通しは、世界経済・コロナ禍の帰趨、イランの市場復帰の可能性、米国シェールオイルの生産動向、OPECプラス特にサウジ・ロシアの生産政策等々の変動要因が多いが、ブレント原油価格は50ドル前後と予想しています。
次に、カーボンニュートラル(CN)を巡る主要国の動きの説明がありました。
EUは2050年CN実現を目標とし「グリーンディール」でコロナ復興を目指します。中国は2060年目標、日本及び米国は2050年目標としています。その実現には、省エネ徹底+非化石化推進、電力化促進+電力ゼロエミは必至で、水素など革新的エネルギー・アプローチが不可欠であり、更にカーボンニュートラル実現の「移行コスト」の最小化も重要であります。
更に、コロナ禍の短期的並びに中期的影響に加えて、長期的影響の“ポストコロナ・世界変容シナリオ”についてのお話しが有りました。
コロナウイルス感染拡大によって引き起こされた政治・経済・社会のあり方の変化が、そのまま維持・強化されていく世界のシナリオです。経済効率の追求のみでなく安全保障が重視され、デジタル化の進展が社会を変容させるシナリオで、電力需要が増加する半面、石油需要はピークを打つことになるとのことです。
また、炭素循環経済(Circular Carbon Economy)の紹介がありました。
CCEとは、大気中に存在するCO2を循環構造に見立てて、全体を俯瞰する包括的な観点から削減を進めていく考え方です。利用可能な技術は全て活用するという観点から、大気中の炭素削減策を、削減(Reduce)、再利用(Reuse)、再循環(Recycle)、除去(Remove)の4つの「R」の技術で進めるとのことです。ブルー水素やブルーアンモニアへの関心と期待は大いに高まって参ります。
最後に、我が国のエネルギー政策の課題についてのお話しが有りました。
カーボンニュートラルを実現させるためには、非化石エネルギーの推進と共に石炭、石油、LNGの脱炭素化も不可欠であり、S(安全性:Safety)を大前提に、3つのE (安全保障:Energy Security、経済効率性:Economic Efficiency、環境適合:Environment)を踏まえたエネルギーベストミックス政策の追求が重要です。原子力については、再稼働と運転期間の延長のみでは足りなく、新設やリプレース、さらには小型モジュラー原子炉(SMR: Small Modular Reactor)などの新技術の追求も必要であり、再生可能エネルギーの適切な促進と省エネルギーの更なる深堀りも求められる、等々の指摘がありました。
質疑応答では、「ブルー水素、ブルーアンモニアの日本での需要予測」、「カーボンニュートラルの本質」、「3E+Sの4つの優先順位」、「中国のエネルギー戦略」などについての率直な意見交換で大いに盛り上がりました。
今回の出席者からは、「コロナ禍とエネルギー問題のグローバルな視点からの説明は、有難い。それに留まらず、IEEJのサウジとのブルー水素・ブルーアンモニアの実証実験に注目しています。」或いは「我が社のCSRやSDGsの計画策定やレポート作成する際に大いに参考になります。」などの声が有りました。
【小山堅講師略歴】
1982年3月 早稲田大学 政治経済学部 経済学科 卒業
1986年3月 早稲田大学大学院 経済学 修士修了
1986年4月 (財)日本エネルギー経済研究所入所
1995年4月 海外派遣(英国ダンディ大学、2年間)
University of Dundee (Scotland, UK), Centre for Petroleum & Mineral Law & Policy PhD課程に留学
2001年6月 博士号(PhD)取得
2007年6月 理事 戦略・産業ユニット総括
2010年4月 東京大学公共政策大学院 特任教授
2011年6月 常務理事 首席研究員 戦略研究ユニット担任
2013年4月 東京大学公共政策大学院 客員教授
2017年4月 東京工業大学科学技術創成研究院 特任教授
2020年6月 専務理事 首席研究員 戦略ユニット担当(現職)