構想エネルギー21研究会エネルギー産業構造の変革期が訪れようとしています
一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第126回勉強会を開催しました
2020.07.21 更新
2020年7月16日 当社社長一柳が代表幹事を務める構想エネルギー21研究会の第126回勉強会を開催しました。
今回は、BNPパリバ証券株式会社 グローバルマーケット 統括本部 副会長 チーフクレジットストラテジスト兼チーフESGストラテジスト 中空麻奈様に登壇頂き、『ESG投資の最新動向と事業会社への影響』とのテーマでお話しを頂きました。
まず、今回の新型コロナウイルスの出現からパンデミックに至ったことによる、我々の社会経済活動の変化に伴う事業会社への影響について、投資サイドが検討する事例の説明がありました。
・生活や働き方について変わることが前提となり、企業はその変化に適合した利益の上げ方を追求することが必要である。
・従来からのクレジットの定石である、不動産等の優良資産の保有状況やコア事業の安定性などに対する見方も変えなければならない。
・アフターコロナについてビフォーコロナと同じ絵図を描く経営者は失格である。
・サプライチェーンの立て直しについて、国内回帰か或いはニアショアか等々、個別企業の実態に即して正解は様々である。
・アフターコロナで戻る市場、拡大する市場、半減する市場をしっかり見分ける。
・新たな規制や気候変動が、次の勝ち組を決めるキーワードだと思われる。
・今後の業績向上には、サステナブル事業及びサステナブルファイナンスへの取組がお勧めである。
次に、ESG投資のマーケットの潮流についての説明がありました。
1990年代、従来の社会責任投資(SRI)は倫理観が先行して投資効率は置き去りにされていました。2006年に国連責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment) が提唱され、倫理一辺倒ではなくESGへの配慮と経済的発展の両睨みの投資にシフトチェンジされ、当初株式で始まったESG投資は、グリーンボンドやサステナブルボンドによる債券投資が活発となっています。日本においては、2015年にGPIF(年金積立金管理運用(独法))がPRI署名したことにより一般企業の署名数も2倍以上となり、日本のESG投資増加率は、ここ数年、欧米を凌駕しています。
ESG投資は、新型コロナウイルス問題も乗り越えると見られ、妙味を増す投資対象となっております。昨年6月にEUの欧州委員会のTEG(テクニカル・エキスパート・グループ)が、環境関連の経済活動の分類のタクソノミー、EUのグリーンボンド基準、ベンチマークに関するレポートを公表し、同時期に欧州委員会が気候関連財務情報開示に関するガイドラインを公表しています。これらのアクションプランは、サステナブルファイナンスに資金の流れを着実に振り向けるための包括的な取組みの一環となるものと注目されています。
最後に、今後コロナ対策のプロジェクトに向けて資金が使われるソーシャルテーマ債を含めESG債券投資は大いに拡大すると思われるので、これからの企業の魅力度向上の為にも、タイミング良くなるべく早期にESG債を発行することをお勧めしますと結ばれました。
質疑応答では、「ESG債券への取組が、欧州に比べ遅れている日本企業の対応策」、「脱炭素が遅れている東南アジアでのESGの取組の可能性」、などについての率直な意見交換で大いに盛り上がりました。
今日の勉強会の出席者からは、「中空講師のESGへの取組姿勢や明確な物言いに触発された。日本でのESG投資の拡大の為に今後とも大いに活躍して欲しい。」或いは「今までESGについて漠然としたイメージしか持っていなかったが、我が社の企業価値向上の為の必須科目であることを理解した。」などの声が有りました。
【講師ご略歴】
○ 中空麻奈様
BNPパリバ証券株式会社 グローバルマーケット統括本部 副会長
チーフクレジットストラテジスト兼チーフESGストラテジスト
1991年慶應義塾大学経済学部卒。野村総合研究所入所。郵 政省郵政研究所出向。97 年野村アセットマネジメントに転籍、 クレジットアナリストとして金融セクター、ソブリンを担当。
以降クレジットアナリシスに従事。2000年モルガン・スタンレー 証券に移籍、事業会社セクターを担当。2004 年JPモルガン 証券に移籍、クレジット調査部長として全セクターを担当。
2008年BNP パリバ証券にクレジット調査部長として入社、
2011年より市場調査本部長 チーフクレジットアナリスト、
2018年7月からチーフESGアナリストを兼務。
2020年2月より現職。
『日経ヴェリタス』債券アナリスト・エコノミストランキング、クレ ジットアナリスト部門第1位(2015年)、第2位(2017・2016・ 2014・2013年) 、3年連続第1 位(2012・2011・2010年)。
財政制度等審議会財政制度分科会起草委員、税制調査会委 員、国税審議会委員、経済産業省サステナブルな企業価値創 造に向けた対話の実質化検討会委員、環境省グリーンボンド・ グリーンローン等に関する検討会委員、経済産業省産業構造 審議会臨時委員、日本EU学会会員。
著書『ユーロ連鎖不況』『早わかりサブプライム不況』『図解ソ ブリンリスク早わかり』。近著には『グローバル金融規制の潮流』がある。